おなかがへった。

 おなかがへった。
 肺が呼吸をするたびにおもりのような空腹感を胃に与える。布団に寝転がってネットばかりしている場合じゃない。まずは何か食べないと。よしシミュレーション、マントを翻す戦士のように毛布を羽織ながら立ち上がる(パンツ一丁じゃ寒いしね)、一歩進んで扉を開け廊下兼キッチンに到着、ご飯炊いたか?炊いてない、冷蔵庫に何かあったか?何もない、なんてこったい何も食べられないじゃないかい、あ、パスタがあった、シミュレーション終了。もちろん、この間まったく動いない。動いていないのに腹がへる。ぐぅと鳴る。よし、お前がぐぅなら僕はパーをだすぜ。さあ、勝負に勝ったから人は食わねば生きていけないという業から開放してくれたまえ。当然、開放されない。
 僕の意思はとても強いので、いくらお腹が抗議しても断固動かない。男らしい。おなかがへった。飯を作るという難関の先にはさらに食料買出しというコロンブスもビックリの大航海をしなければならない。もし生きてスーパーにたどり着くことがあったら略奪の限りを尽くそうと誓う。おなかがへった。こういうときのために素晴らしい解決方法があるのを思い出した。ズバリ、何もしない。もっとお腹がへればさすがにやる気が出て動き出さずにはいられないだろう。では、がんばってね1時間後の僕。今の僕より大変だけどがんばってねー、がんばってねー。さよならー。おなかがへった。